ハースストーン・レジェンドランクを目指す 第四回 〜 プレイングを改善しよう 〜
今回は、デッキリストの決め方 に続いて、プレイングの上達方法について考えます。
目次
プレイングとは
第二回 でも書いたように、Hearthstoneで強いプレイヤーになるには、プレイングが上手くなることは必要不可欠です。
今回は、プレイングをマリガンとそれ以外で分けて、それぞれで上手くなる方法を考えていきます。
マッチアップ勝率に見るプレイングスキル
マッチアップ勝率のランク帯ごとの変化を見ると、プレイングがもたらす影響を確認できます。
あるデッキをプレイヤーが使ったことの強さ$$P$$をデッキの強さを$$p_d$$、プレイヤーの強さを$$p_p$$で表すと、$$P = p_d + k_d \times p_p$$のように書けるとします。
デッキによって、定数$$k_d$$は変わります。
つまり、プレイヤーの強さが全体の強さに与える影響の大きさはデッキによって変わります。それを確認するため、具体的に統計を確認します。
例えば、執筆時点では、獣ハンターのランプドルイドに対する勝率は、レジェンド上位1000で51.04%(913ゲーム)、ダイヤモンドで57.57%(14095ゲーム)です。
このとき、母比率の差の検定等を行うことで、レジェンド上位1000での勝率と、ダイヤモンドでの勝率は差があると結論付けられます。
つまり、ランプドルイドはランクが上がるごとに勝率を改善しており、定数$$k_d$$は獣ドルイドよりも大きいです。
このように、プレイヤーの強さの影響はデッキによって異なり、その影響の大きさのことはスキルキャップと呼ばれています。
マリガン
マリガンはなぜ重要か
Hearthstoneにおいて、自分の意思で引くカードを決定できる局面は少なく、その中でも必ず毎試合行うことができるマリガンはとても重要です。
例えば、アグロデッキではマナカーブがある程度決まってしまうので序盤の勢いに密接に関わります。
また、コントロールデッキでは相手がどのような動きをするかをヒーローを見て想定し、それに対応できるカードを探すことで勝率が大きく変わります。
統計の限界
HSReplayでは、マリガン関連のデータとして、マリガン勝率とキープ(率)が表示されています。
そこで、これらを活用してマリガンを改善する方法を考えます。
- マリガン勝率 $$cdots$$ そのカードが最初の手札にあった試合の平均勝率。
- キープ $$cdots$$ マリガン時にそのカードが配られた場合にキープされる確率。
仮に、マリガン勝率が高く、キープ率の低いカードがあったとします。ここから、何が読み取れるのかを考えると、
- 試合数やキープ率がかなり低いときは、そもそも真のマリガン勝率が予測できない
- 特定の相手に強いカードなので、それが相手のときにキープされていてマリガン勝率が高い
- 何か他のカードがあるときにセットでキープされ、それでコンボとして強いのでマリガン勝率が高い
- 上手いプレイヤーはそれが強いことを理解しているのでキープするが、理解していないプレイヤーがキープしないことで強い人のデータだけが現れている
といったように様々考えられます。この4通り以外もありえます。
この中で、2つ目は、全体のマリガン勝率と対ヒーローのマリガン勝率を比べれば区別できますが、3つ目や4つ目はHSReplayのデータだけを見て区別することは難しいです。
4つ目は、ランク帯ごとに比較すればよさそうに見えますが、セットキープ等の判断もランクが上がるほどうまくなっています。
このように、HSReplayだけを見てマリガンの基準を作るのは限界があります。
座学や反省でマリガンのおおまかな基準をつくったあとで、それを修正したり、知らなかった知見を得たりするのに、HSReplayは有用です。
基本的な見方
以上を踏まえて、HSReplayからマリガンを改善する方法を考えます。
マリガン勝率とキープ率の2つを見るので、それぞれの高低で場合分けします。
高低の基準は場合によって変わりますが、今回は、勝率よりもマリガン勝率が高いときは高いと表現することにします。
このとき、HSReplay上では、緑色の文字で、△55.7%のように表示されているものが該当します。
キープについては、50%以上を高いと表現することにします。
- マリガン勝率が高く、キープ率も高い
- よくキープされていて、それでデッキの勝率を上回っているということは、一般的にキープしたほうがよいです。
- マリガン勝率が高く、キープ率は低い
- 上の[統計の限界](ページ内リンク)で述べたように、いろいろな可能性があります。
- マリガン勝率が低く、キープ率は高い
- これも様々な可能性があります。
- 弱いが一般的にキープされている
- 不利な対戦相手に対してキープされやすいので、マリガン勝率が低い
- その他
- 1つ目について$$cdots$$アグロデッキでとりあえず低コストのカードはキープすべきであるという発想をするプレイヤーは多いですが、必ずしもそうとは限らないです。
- 2つ目について$$cdots$$とりあえず不利な対戦相手と戦うためにキープするので、そのマッチアップの勝率に近づいていますが、結局キープすべきであることは変わらないということもありえます。
- これも様々な可能性があります。
- マリガン勝率が低く、キープ率も低い
- たいていはキープしない方がよいカードがここに含まれます。
- ただし、他の2枚(後攻では3枚)が十分によければキープできる場合もあります。例えば、アグロデッキで、4コスト以上のバフをかけるカードはここに当てはまる可能性が高いですが、他のカードで展開が十分可能で、対戦相手の除去の種類がよく分かっていて相手が展開を除去できないことがわかっているとき、バフカードをキープするのは選択肢としてありえます。
具体的に見てみる
ここでは、上の内容を実際のデータに適用します。
執筆時点での適当なランク帯でのナーガプリーストの統計を用います。
対戦相手はすべてとし、試合数は26000で、十分大きいです。
- マリガン勝率が高く、キープ率も高い
- 「ヘビカズラ」、「獰猛なスリザースピア」、「贖罪の大聖堂」、「マークウォーターの書記官」が該当します。
- キープのランクごとの変化を確認すると、「マークウォーターの書記官」以外は、ランクが上がるごとにキープが大きくなります。これを加味すると、「マークウォーターの書記官」のキープの優先順位は他と比べると低いとわかります。
- マリガン勝率が高く、キープ率は低い
- 「密言・貪」と「光熱のエレメンタル」が該当します。
- 「密言・貪」は、ウォーロックが対戦相手のときだけマリガン勝率やキープが高いです。したがって、ウォーロックが相手のときにのみキープすべきだと考えられます。
- 「光熱のエレメンタル」は、対戦相手のうちの一部でマリガン勝率が高く、キープが低くなっています。これは、テキストを考えると、セットキープで強いカードだと解釈できます。
- マリガン勝率が低く、キープ率は高い
- 該当するカードはありません。
- マリガン勝率が低く、キープ率も低い
- たくさんのカードが該当します。
- ここに該当するカードでは、対戦相手を選択してから、統計を見ることを推奨します。例えば、「侍女」は特定の相手では良い統計を示しています。これは、ドローやリソースの継続性が重要な相手では効果的に機能しやすいからです。
以上のように、ある条件でのマリガン勝率、キープだけを確認するのではなく、他の条件でどう変化するかを見ることで、より解像度の高い解釈が可能になります。
マリガン以外
前回 でも書いたように、上手い人の配信を見て勉強することや、デッキガイドを見ること、プレイしたあとで反省することはプレイングを上達することにおいて重要です。
ここでは、Hearthstone Deck Trackerをうまく使うためのポイントをいくつか挙げます。
- 相手が使ったカードを丁寧に確認する
- デッキリストの推測ができていれば、使ったカードから残りのすべてのカードがわかる
- 特に山札が切れそうな対戦や、打点が限定されている相手では重要
- 相手は何枚マリガンでキープしたか、それをいつ使ったかを確認する
- それを試合の後半まで使わないなら、それは何だと考えられるか
- 相手の手札の内、長いターン使われていないカードはあるかを確認する
- コストの高いカード、リーサルをとるためのカード、全体除去、秘策等の可能性がある
- どのカードであれば自分にとって嫌か、それをケアすることは可能かを考える
- ケアしていても勝てないなら、ないものとして考えて早く勝ちに行く(長引くと、引く可能性はむしろ上がっていく)
- 逆に、自分の手札で同じカードが2枚あったとき、どちらを使うかで相手に与える印象は変わり得る
統計を活用した反省
また、HSReplayの統計を用いてプレイングを改善する方法として、個人の統計とデッキの統計を比較するという方法があります。
個人の統計は マイデッキ から見ることができます。
例えば、自分のマリガン勝率がそのリストの統計と比べて著しく低いなら、そのカードをキープする判断基準が誤っている可能性があります。
また、ドロー勝率が低い場合には、使い方が誤っている可能性があります。
ただし、個人の統計を活用するときには、試合数が少なくなりがちであるということには注意が必要です。
レジェンドやレジェンド上位を目指すにあたって
レジェンドやレジェンド上位を目指すとき、勝率を上げることはもちろん重要ですが、試合回数を増やすことも必要です。
勝率が$$w$$で$$n$$試合したとき、勝ち越す試合数$$d$$は、$$d = n \times w – n \times (1 – w) = 2 n \times (w – 0.5)$$と表せます。
例えば、$$w = 0.6,n = 50$$で$$d = 10$$、$$w = 0.55, n = 200$$で$$d = 20$$となります。
つまり、勝率が高くても試合数が少ないと、ランクや順位を上げるのに必要な勝ち越し数を増やすことができません。
勝率を上げることはもちろん重要ですが、試合をたくさんすることも目標の到達には重要です。
まとめ
マリガンは、自分の意志で引くカードを選べる少ない機会であり、重要です。
実際にプレイした感覚とすり合わせながら、マリガン勝率とキープ率を見てマリガンを改善することができます。
自分自身の統計と全体の統計を比較することで、無自覚だった自分のプレイングの悪い点に気づくことができます。
勝率にこだわることも大事ですが、とにかく試合の回数をこなすことも必要です。バランスを取りながら頑張りましょう。
次回
バトルグラウンドのHSReplayの使い方を考えます。
基本的な使い方から、ヒーローの順位分布の解釈、平均順位等を見ていきます。