ハースストーン・レジェンドランクを目指す 第二回 〜アーキタイプを決めよう 〜
前回に続いて、今回はHSReplayを用いて強いアーキタイプを探す方法を説明します。
強いプレイヤーになるには
そもそも、強いプレイヤーとそうでないプレイヤーの違いはどこにあるのでしょうか?ここでは、属人的な要素と、そうでない要素に分けて考えてみます。
属人的でない要素とは、極端に言えば今始めたプレイヤーでも真似できることで、どのアーキタイプやデッキリストを使うのかといった要素を指します。
今回のアーキタイプの決め方、次回のデッキリストの決め方 はこれに該当します。
また、属人的な要素とは、プレイング、具体的に言うと、マリガン、どのターンにどのカードを使うのか、どれを攻撃するのか等の要素を指します。
[次々回のプレイングの改善方法] はこれに該当します。
今回は、アーキタイプの決め方について考えていきます。
まずは、Tier表を題材に、統計を使う上で注意すべきことを述べ、次に、レジェンドランクを目指す方におすすめのアーキタイプの決め方を紹介します。
Tier表について
カードゲームにおけるTierは、何らかの指標を決め、それの大小でアーキタイプを並び替えたものを指します。
HSReplayのTier表 では、勝率を指標にしています。
勝率の高低は意味としてわかりやすく、強さの一側面を表現していますが、これには、2つの問題点があります。
まず、使用率が高いデッキはミラーマッチが増えるという問題があります。
あるアーキタイプの使用率が$$p$$勝率が$$w$$であるとすると、ミラーマッチを除いた勝率$$\bar{w}$$は$$\displaystyle \bar{w} = \frac{w – \frac{p}{2}}{1 – p}$$と表せます。
例えば、$$w = 0.6$$としても、$$p_{1} = 0.2, p_{2} = 0.05$$では、$$\bar{w}_{1} = 6.25 \times 10^{-1}, \bar{w}_{2} = 6.05 \times 10^{-1}$$のように約2%の差があります。
つまり、勝率が等しくても、使用率が異なると、ミラーマッチを除いた勝率は異なるということになります。
Tierが、あるアーキタイプが他に比べてどの程度秀でているかを表すものだと考えるなら、ミラーマッチは除くか、使用率も指標に取り込む方が相応しいということになります。
後者の方針を採用したTier表に、海外のメタ分析サイトであるViciousSyndicate の作成するMeta Scoreがあります。
次に、使用率が低いと真の勝率が予測できないという問題があります。
あるアーキタイプの試合回数が$$n$$回で、勝率が$$w$$であるとします。
このとき、いくらかの現実的な仮定のもとで95%信頼区間は$$\displaystyle \biggl[ w – 1.96 \times \sqrt{\frac{w(1-w)}{n}} , w + 1.96 \times \sqrt{\frac{w(1-w)}{n}} \biggr]$$と表せます。
例えば、$$w = 0.6$$として、$$n_{1} = 1000, n_{2} = 100$$では、それぞれ$$[5.70 \times 10^{-1},6.30 \times 10^{-1}],[5.04 \times 10^{-1}, 6.96 \times 10^{-1}]$$となります。
それぞれの区間の幅が、勝率として6%と20%程度で、試合数が10分の1になると約3倍広くなっています。
(95%信頼区間とは、$$n_i$$回試合し、$$w_i$$回勝利するという試行$$i$$をたくさん繰り返し、信頼区間$$l_i$$をそれぞれ求めたとき、その区間の95%が真の勝率$$w_{\text{T}}$$を含んでいるような区間のことです。)
現実的な仮定とは1.対戦相手の分布が測定する期間に一様とみなせる程度にばらつきがないこと、もしくは時間平均的な勝率として勝率を定義すること、2.nが勝率の確率分布である二項分布を正規分布とみなせる程度に大きいことなどです
この試合回数が少ないことで統計が信頼できなくなるという問題は、HSReplayを使う上で付随する問題でもあります。また、このコラムで記述する内容にも、この問題は常に起こり得ます。
HSReplayを使わない方法
また、HSReplayにおける他の問題として、例えば使用した人数と試合回数が一定数を超えないと表示されないので、数時間から1日程度の期間でのトレンドを追いかけることができないという問題があります。
そこで、HSReplayを使わない方法をいくつか挙げます。
まずは、情報発信を行うアカウントや、レジェンド上位のプレイヤーの情報を追いかけることです。
日本人では、ahirunさん、Alutemuさん、BeerBrick、海外では、HS Top Decks、Hearthstone-Decks.net がおすすめです。
次に、他のプレイヤーと交流することです。
情報収集の効率がよくなる、リプレイを共有することで、客観的にプレイングの反省ができる等の利点があります。
おすすめのアーキタイプの決め方
ここでは、第一回 で説明した決め方とは別のものを紹介します。
一言で表すと、ランク帯の中での使用率の変化をみるという方法です。プレミアムに加入しないと見ることができない点に注意が必要です。
まず、メタ-使用率 のページを開きます。
そして、今回は例としてダイヤモンド1~5について見るので、ダイヤモンド1の使用率で降順にするために、ダイヤモンド1の下の矢印をクリックします。
すると、下の画像のように表示されます。
決め方は、以下の通りです。
それぞれのアーキタイプ$$i$$について、ダイヤモンド1の使用率とダイヤモンド$$5$$の使用率をそれぞれ$$p_{1}^{i},p_{5}^{i}$$とします。
$$i$$は、上から順番に$$1,2,\cdots$$と番号をつけています。
このとき、$$p_{1}^{i}$$が大体1%以上のものについて、$$\displaystyle \frac{p_{1}^{i}}{p_{5}^{i}}$$を計算します。
ただし、ダイヤモンド1のゲーム数が10000より少ないときは、信頼性の問題でこの方法は適していません。
計算はざっくりで構わないのですが、それでも面倒ならランクが上がるにつれて色が濃くなっているものを探してそれだけを計算しても問題ないです。
この値が最も高いものがおすすめのアーキタイプということになります。
簡単に根拠を説明します。この数値は、ダイヤモンド5の使用率と、ダイヤモンド1の使用率の比であり、ダイヤモンドランク1~5の間でどのくらい使用率が増えたかを表します。
たくさんのプレイヤーが試合を行う中で、それぞれのランクで使用率は変化していますが、結局それぞれのランクで勝率が50%より高いなら、それより一つ上のランクの使用率はもとの使用率より大きくなります。
そして、その増加の様子は同じ勝率では使用率が高いと大きくなります。
そこで、ダイヤモンド5の使用率で増加量を割ることで比較できる量にしています。
すると、使用率の変化を加味した上で最も勝率の高いデッキを求めることができます。
これは、前回に説明した メタ-クラス別 を利用する方法よりも、そのランクの中の使用率の変化を取り込んで強さを比べることができるという点で優れています。
最後に
まとめ
強いプレイヤーになるためには、プレイングとデッキ選択のいずれも重要です。
そこで、今回はデッキの種類、つまりアーキタイプを決める方法を考えました。
HSReplayにおいてTier表は勝率の高い順にアーキタイプを並べていますが、使用率も注目すべき指標です。また、試合数が十分にないときには統計から信頼できる情報を得るのが難しくなります。
メタ-使用率のページでは、細かい使用率の変化を見ることができ、それを利用してレジェンド未満についてはより上手くアーキタイプの選択ができます。
次回
デッキリストの決め方を考えます。そもそも変えるべきタイミングはいつか、変えるべきカードを決める方法、テックカード等を考えます。